人気ブログランキング |



天性の窓口
先日、父がちょっとした困りごとに巻き込まれたので、当人ではないけども、わたしが担当の窓口に電話してみた。

電話口のおじさんは穏やかで丁寧なお声をしてらして、一通り事情を説明したあとに、詳しくお話を聞きたいのでこちらに来れますか、と言う。

これまでも面倒ごとを起こしてきた父のこと。時間を削られるのはまっぴらだったが、なんだか不思議とそのお声の主に会ってみたい気持ちになった。

主は、70代くらいの白髪まじりのおじさまであった。目がくりくりと大きくて、度の強いレンズ越しにそれは少し歪んで見える。
なで肩で痩せ型で、物腰がなんとも柔らかく、ちょっと良い匂いもして(柔軟剤かと思われる)、つまりとても「癒し」要素の多いお方だった。
声から抱いたイメージに、どんぴしゃぴったりカンカンであった。
危険要素の全くない、ひたすらに親切すぎる「ゴラム」(byロードオブザリング)とでも言うべきか。

結果、当人でないわたしにできることはやはり限界があり、解決の知恵を受け取ることくらいしかできなかったのだが、
そこを出て外気に触れたとき、なんだかもう、まるですっかり何もかもが解決したような気軽さに溢れていた。澄んだ秋晴れの日であった。

これはひとつのマジックだな、と思う。
会っただけで心に作用する人、というのがいる。
そういう人が持つ雰囲気、印象、どうしたらそうなれるのかと思う。
しかし、そういう人はたいてい、特別な存在感として選ばれた「声」を持っている気がする。


亡き祖母の晩年は、どこの家でもスムーズにいかないようにゴタゴタがあった。
そのとき、担当のケアマネージャーさんと何度も電話でやり取りしたのだが、その方も穏やかな、人を安心させるお声をしていた。
その人と話すだけで、「これはいつか形を得る物事であるのだ」と思え、結実が遥かにでも見えることに、どんなに励まされただろう。

結局、いろんな流れでそのケアマネさんとはお会いしないで終わってしまったのだが、またあの声に出会いたいなと思っている。


サービスの窓口で嫌な思いをした、という人はたくさんいる。わたしなんて、詐欺の一味だと疑って口座を開設してくれなかった郵便局員の、防犯マニュアルめいた声をいまでもはっきり覚えている(学生の頃、なんだったんだあれー!)。
しかし、まぁそういう対応自体が間違っている人は置いておいて、誰もがあんな声や存在感を持てるわけがないのだから、基本窓口に期待するのも良くない。

なぜならもうあれは天性のものなのだから、
物腰、対応、そして声、すべて天職たる「天性の才」を持つ人による「天性の窓口」なのだから、
比べたところで仕方がないのだ。
その窓口の人に当たったことは、単に運が良かったのだ。

(いや、今回のことがないのが一番運が良いことなんだけど…)


よく宝くじは、「窓口の人が笑顔のところだとよく当たる」という。
ところで最近、ずっと通過するだけだった宝くじ売り場の女性が、ニッコニコのおばさまに変わった。もうその弧の字を描いたニッコニコの口元が、遠くからでもわかるレベルなのである。
「いらっしゃいませ〜」に聞き耳を立てる。高らかと天に響くラッパのようなそれは、大変に縁起が良さそうではないか。

わたしは珍しく立ち寄り、珍しく多く買ってみた。二枚買うスクラッチを五枚も買った。

天性の窓口は、天に願いを届けてくれるか

もし当たったら、
父親にアマノフーズの豪華みそ汁セットくらいは送ってあげる。



天性の窓口_f0228652_18064349.jpg

お前さん、どうしてそんななっちまったんだたい?



本日で企画展、無事終了となりました。
足を運んでくださった皆様、作品を見てくださった皆様、どうもありがとうございました。










by loopmark1210 | 2020-10-22 17:12 | 日常記
<< 「イラストレーターが挑む寺山修... 竪穴式住居 vs 攻殻機動隊 >>